安坊浅草だより

6月の終わりから7月にかけて、浅草には江戸時代から続く歳時記が多々ございます。
江戸っ子たちによって形作られた夏の行事をご案内いたしましょう。
六月二十四日、二十五日 「お富士さんの植木市(二の富士)」
場所・・・浅草富士浅間神社周辺
浅草富士浅間神社周辺
手ぬぐい「釣りしのぶ」
おすすめ手ぬぐい
「釣りしのぶ」

浅草富士浅間神社のご縁日として、浅草寺裏から浅草富士浅間神社へ続く道に植木商が集い、苗木や盆栽などが販売されます。染の安坊では、植木市で「釣りしのぶ」を購入し、軒先に吊るして楽しんでおります。とはいっても、風鈴が鳴りすぎるとご近所さんにご迷惑ですから、風鈴の中の棒にセロテープをひとまきするまでが毎年の習わしです。

六月三十日、七月一日 「お山開き」
場所・・・小野照崎神社
浅草富士浅間神社周辺
手ぬぐい「五富士」
おすすめ手ぬぐい
「五富士」

一八二八年(文政十一年)に建造された「下谷坂本富士」は、富士山から運ばれた溶岩で作られており、この二日間のみ一般公開されます。存在感のある富士塚は必見です。
また、小野照崎神社には、かつて渥美清さんが売れない時代に「煙草を一生吸いませんので仕事をください」と願掛けを行ったところ、「男はつらいよ」の主役を得たという逸話も。芸能、芸術関係にも信仰の厚い神社としても有名です。

六月三十日~七日 「夏越の大祓い」/「夏詣」
場所・・・浅草神社
夏越の大祓い
手ぬぐい「七夕」
おすすめ手ぬぐい
「七夕」

六月三十日は、年の半分の節目として茅の輪をくぐり身を清める「夏越の大祓い」が行われます。
大晦日に身を清めて元旦に「初詣」をするように、残る半年の平穏を願い詣でる習慣を「夏詣」と名付け、境内で様々な催しを行っています。
元旦の晴れ着に対し「浴衣」を、年末の年越しそばに対して「そうめん」を食す習慣など、捻りの効いた発想は新鮮です。古式ゆかしい七夕飾りも見所です。

七月六日~八日 「入谷朝顔まつり」
場所・・・入谷鬼子母神
朝顔市
手ぬぐい「朝顔花ざかり 陽」
おすすめ手ぬぐい
「朝顔花ざかり 陽」

江戸時代、「変わり咲き」と呼ばれる朝顔が大流行しました。花粉の交配により様々な花を咲かせることができたため、凝り性の江戸っ子たちはすっかり夢中になり、最盛期には千種類もの朝顔が生まれたそうです。
現在でもその熱気を残すのが、入谷朝顔まつり(朝顔市)です。百二十軒の朝顔業者が並ぶ様子は圧巻、沢山の人で賑わう下町の夏の風物詩です。

七月九日、十日 「ほおずき市」
場所・・・浅草寺
ほおずき市
ほおずき市
手ぬぐい「橙の灯り」
おすすめ手ぬぐい
「橙の灯り」

観音様の功徳日で日数の一番多いのが七月十日で、この日にお詣りすると「四万六千日」分の功徳が得られることから、江戸時代から多くの参拝者でが賑わうように。
やがて「ほおずき市」が立つようになり、縁起物として、またお盆飾りとして、ほおずきを求める習慣が根付いていきました。
この二日間だけ授与される「雷除札(かみなりよけ)」もお忘れなく。 活気あふれる江戸の風情をお楽しみいただけます。

七月二十九日 「隅田川花火大会」
場所・・・【第一会場】桜橋付近/【第二会場】 駒形橋付近
隅田川の花火
手ぬぐい「新 隅田川の花火」
おすすめ手ぬぐい
「新 隅田川の花火」

一七三三年(享保十八年)の五月二十八日、隅田川で水神祭りの「川開き」が行われました。慰霊を兼ねて花火が打ち上げられたことから、この日は「花火の日」としても知られています。
以来、隅田川の川開きは賑やかな行事のひとつとなり、趣向をこらした大花火が打ち上げられるようになりました。当時から、夕涼みを楽しむ人々や屋形船で大賑わいだったそうです。
ちなみに「鍵屋」「玉屋」の二大花火師が活躍した舞台も、江戸時代の隅田川でした。

ご案内は以上となりますが、お楽しみいただけましたでしょうか。この場所でしか見られない風景や、肌で感じる賑わいをお伝えしきれないのは残念です。もし浅草近隣を観光される際には、歳時記の中で守られてきた風情に目を当てていただくと、より味わいが感じられることと思います。